【ECのプロが解説!】ECサイトを運営するなら
自社EC?モール?成功の秘訣を事例を交えてご紹介

スマートフォンの普及や新しい生活様式の影響により、日本国内のEC市場はますます拡大しています。
しかし、ECサイトを運営するにあたって、自社ECとECモールどちらに比重を置くべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自社EC型およびモール型運営の特徴やメリット・デメリット、運営成功のコツについて事例を交えながら解説します。ECサイト運営に必要なノウハウが身につくので、ぜひお読みください。
自社EC型

自社EC型とは、独自のドメインを取得し、自社でECサイトを運営することです。
実店舗にたとえるなら、街中の通りに面して出店する“路面店”のイメージが当てはまります。
また、大きく分けると4種類の構築方法があることも自社EC型の特徴です。
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ASP型
構築に必要なシステムをレンタルするイメージです。 初めから必要な機能が揃っており、比較的安価で手軽に始められる点が魅力的。
小規模運営におすすめな初期費用無料タイプ(BASE、STORESなど)と、中規模以上の運営におすすめな有料タイプ(ショップサーブ、Shopifyなど)に分けられます。 -
オープンソース型
無償のソースコードをカスタマイズしてサイトを構築できます。費用はかなり抑えられますが、高度な知識やスキルが必要で、セキュリティが脆弱なものも懸念点です。(EC-CUBE、Magentoなど)
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パッケージ型
ベンダーからECパッケージを購入するタイプで、カスタマイズの自由度の高さが魅力的。しかし、導入費用が比較的割高なため、中~大規模なECサイト向けです。(例:コマース21、ecbeingなど)
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フルスクラッチ型
自社でECサイトを一から作成する方法です。費用も時間も一番かかりますが、自由度も一番高く、機能面で他社と大幅に差をつけたい場合などにおすすめです。 自社EC型の種類によっても変わりますが、運営におけるメリット・デメリットとしては次のような内容が挙げられます。
- 自社EC型のメリット
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自社のブランディングがしやすい
顧客データを収集・活用しやすいディングがしやすい
機能やデザインをカスタマイズしやすい
詳細は後述しますが、上記を踏まえると自社EC型は「専門性が高い商品」「高価な商品」を取り扱う事業者におすすめです。
費用感は無料~数千万円規模までさまざまです。
基本的に価格が高いほど機能やデザインは充実している傾向にあるので、自社の商品数や売上目標、事業戦略に合わせて選びましょう。
自社ECでのサイト運営に向いている店舗事例
下記の条件に当てはまる事業者の場合、自社ECでのサイト運営を実施したほうが、売上アップやファン獲得につながりやすいです。
ブランド力、商品力が強い自社商品をメインで販売している
専門性の高い商品を取り揃えて販売している
こだわりが強い高価な商品も含めて狭く・深く販売している
配送の質(安全・確実に届くこと)を重視している
このような条件を踏まえつつ、自社EC型向けの店舗事例もご紹介します。
【自社EC事例1】専門書だけを取り扱う本屋
専門書や希少本など、一般的に流通していない書籍だけ取り扱う本屋です。
デザインやコンテンツで購買意欲を刺激しやすい、ユーザー一人ひとりのデータを集めやすいといった理由から、自社ECサイトを活用しています。
- 具体的な商品例
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医療書・占術書・絶版本・初版本など
- 顧客ターゲット
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シニア層・絶版本コレクター・古書愛好家など
- 商品単価
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初版時の正規価格よりも高価
- その他の特徴
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商品状態が悪くても売れる可能性が高い(書き込みがある・ヤケがあるなど)
ユーザーは「初版」か「第〇版」かなどを重視している
欲しい商品がない場合、ECサイトでの購入にいたらない(離脱するケースがほとんど)
その代わりECサイトへ頻繁に訪問してくれる
欲しい商品があれば必ず購入してくれる
【自社EC事例2】 こだわりのワイン店
年代や生産地、ブランドに強くこだわっているワイン店です。
ブランディングのしやすさや価格帯を考慮して、自社ECサイトでの販売ルートを確立しています。
- 具体的な商品例
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オールドヴィンテージワイン・有名ブランドのワインなど
- 顧客ターゲット
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ワインの愛好家・ワインコレクター・富裕層など
- 商品単価
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1万円~100万円以上
- その他の特徴
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ワインボックスやラッピングのデザインも重視している
品質管理や配送方法をアピールしている
美味しい飲み方を紹介している
ユーザーは価格が高くても良い商品が欲しいと考えている
モール型

モール型とは、インターネット上で複数の店舗が集まって構成されるショッピングモールのようなECサイトです。構築方法は大きく分けると、下記の2種類があります。
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テナント型(例:楽天市場など)
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マーケットプレイス型(例:Amazonなど)
テナント型はECショッピングモール上で場所を借りて「出店」し、そこで販売活動を行う運営形態です。実際の“百貨店”や“商店街”と同じく、出店料(テナント料)を支払う必要があります。
一方、マーケットプレイス型は商品だけ「出品」する運営形態です。イメージとしては、スーパーや道の駅にある“農家の直売所”が当てはまります。
モール型のメリット・デメリットをまとめたので、こちらも一緒にご確認ください。
- モール型のメリット
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モール型ECサイト自体に集客力がある
ユーザーからの信頼度が高い
モール型ECサイト運営元のサポートを受けられる
- モール型のデメリット
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競合が多いので不毛な価格競争に陥りやすい
出店するための手数料が高い
モール型ECサイトの状況により集客が左右される
上記を踏まえると、モール型は「大衆向けの商品」「安価な商品」を取り扱う事業者におすすめです。
また、モール型は出店するだけなら、費用を10万円以下に抑えることもできますが、継続的なランニングコストが必ずかかってきます。
モールでのサイト運営に 向いている店舗事例
下記の条件に当てはまる事業者の場合、ECショッピングモールへの出店・出品が適切といえます。
販売している商品が大衆向け・一般的なものである(ターゲットが限定されない)
比較的安価な商品を取り扱っていて広く・浅く販売している
配送のスピード(商品が早く届くこと)を重視している
モール型についても店舗事例をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
【ECモール事例1】主婦層向けの安価なアパレルショップ
主婦層から絶大な支持を集めている、安価でコストパフォーマンスが高い服飾品を取り扱うアパレルショップです。
商品の種類やバリエーションが多いので、比較・検討されることを考慮してテナント型のモールに出店しています。
- 具体的な商品例
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大衆ブランドの服飾品・ファストファッションなど
- 顧客ターゲット
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主婦層
- 商品単価
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1,000円~
- その他の特徴
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女性向けや子供向けの商品を多く取り扱っている
サイズやカラーのバリエーションが多い
モデルや写真にこだわっている
ユーザーは何より価格の安さを重視している
【ECモール事例2】 生活雑貨販売店
日常生活を送るうえで欠かせない、幅広い生活雑貨を取り扱っている店舗です。
受注・発送業務の負担を減らすため、マーケットプレイス型のモールに出品しています。
- 具体的な商品例
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キッチン用品・バス用品・トイレ用品など
- 顧客ターゲット
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主婦層・一人暮らしの若者など
- 商品単価
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300円~
- その他の特徴
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機能やデザインにこだわった商品も販売している
一通りの生活雑貨を揃えてクロスセルを狙う
ユーザーは価格・質ともに重視している
ECサイト運営を成功させるコツ4つ

ECサイト運営を成功させるためには、下記の4つの要素を意識することが大切です。
- 集客
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より多くのユーザーに店舗や商品のことを知ってもらい、実際にECサイトまで来店してもらうこと
- 転換
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来店されたユーザーのうち、より多くの方に商品を購入してもらうこと
- 客単価
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1回の受注につき、より高額の購入をしてもらうこと
- にぎわい
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デザインや写真をうまく使って、ECサイト上で「にぎわい(華やかさ・明るさなど)」を伝えること
それぞれの要素を意識して、以下のような公式で掛け算をすることにより、ECサイト運営の成功へとつながります。
店舗の繁盛=(集客×転換×客単価)×にぎわい
また、4つの要素を高めるための具体的なコツも解説するので、ECサイト運営のノウハウとして押さえましょう。
集客

ECサイト運営を成功させたい場合、まずはユーザーの来店が欠かせません。集客力を高めるためには、下記の2つの方法があります。
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自然検索からの流入(SEO)
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広告宣伝
それぞれ詳細をまとめました。
自然検索からの流入(SEO)
自然検索とは、Googleなどの検索エンジンで商品を検索して、広告枠以外に表示される検索結果のことです。
自然検索の検索結果には数多くのサイトが表示されますが、基本的に上位であるほどクリック率も高くなります。
SEOは大きく分けると、下記の「内部施策」と「外部施策」に分かれます。
- 内部施策
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商品数やコンテンツを充実させる
クローラーが巡回しやすいようカテゴリーを整える
サイトをこまめに更新する
正確かつECサイトとわかる情報を掲載する
スマホファーストでサイトを作成する
- 外部施策
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内部リンクを整備する
「Google Search Console」にECサイトを登録する
対策キーワードを含めてタイトルやディスクリプションを作成する
H1タグやH2タグにも対策キーワードを含める
画像のALTタグを記載する
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【実際の施策事例・内部施策の場合】
<ECサイトの悩み>
自然検索からの流入がほぼない(1日平均5~10PV)
<課題>
競合サイトと比べて導線が悪い
対策キーワードが不十分
<改善策>
商品カテゴリーやサイトマップを整備して、トップページからの導線を改善する
スマホでも見やすいサイトデザインにする
対策キーワードを考えてタイトルや各見出しに入れる
広告宣伝
顧客を増やすためには、インターネット上での広告宣伝も重要です。 ECサイト向けの広告施策として主要な3つを今回はあげてみました。
- リスティング広告
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検索結果の上部に表示される広告
広告を出稿してからすぐ上位表示される
商品名などで検索してきた方に直接訴求できる
- リターゲティング広告
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一度でもECサイトに訪問or広告をクリックしたターゲットに絞って、表示する広告
商品に興味を持っているユーザーに絞って訴求できる
コンバージョン(成果)を上げやすい
- リターゲティング広告
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アフィリエイターが自分のサイトで商品を紹介して、そこから来店・購入を促す成果報酬型の広告
費用対効果に優れている
顕在層・潜在層・低関心層まで幅広く訴求できる
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【実際の施策事例・内部施策の場合】
<ECサイトの悩み>
SEOを実施しても、狙っている対策キーワードが上位10位以内に表示されない
<課題>
競合サイトのドメインパワーが強いため、自社サイトの上位表示が難しい
SEOの施策は効果が出るまで時間がかかる
SEOの費用対効果があまり高くない
<改善策>
短期間で上位表示が狙えるリスティング広告を出稿
キーワードの効果測定を実施してクリック単価を抑える
転換

より多くのユーザーに購入してもらうためには、集客に加えて転換が重要となります。転換のカギとなる要素は、下記の3つです。
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商品内容の充実
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商品説明の充実
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商品購入までの安心感
この3つの要素を意識することで、転換率も比例して高まります。
商品内容の充実
商品内容の充実とは、ユーザーにとって「期待通りの商品」があるかどうかです。
下記の要素を満たすことで、期待通りの商品があると認識してもらいやすくなります。
- 専門商品が多い
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ユーザーのニーズを満たせる専門性の高い商品を取り扱っている
その店舗に行けば欲しい商品が必ず見つかる状況
- 人気商品や新作商品を取り扱っている
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マメに人気商品や新作商品を更新している
人気・新作といったことをサイト上で可視かできる
注目度が高い商品を取り扱うことは集客にもつながる
- 対策キーワードとランディングページ(LP)の内容が一致
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対策キーワードがLPのキャッチコピーなどに入っている
何を売っているページなのか一目で認識できる
商品カテゴリーが整備されていて購買行動に移りやすい
商品説明の充実
転換率を高めるためには、商品説明の充実を図って「欲しいと感じ取れる」ようにすることも大切です。
下記の要素を整えることで、ユーザーのニーズを刺激できます。
- 写真
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商品のデザインや雰囲気が伝わりやすい写真である
ユーザーが使っているときのイメージを想定できる写真である
必要なものだけが被写体として写っている
- 文章
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商品の特徴や魅力がキャッチコピーで要約されている
商品購入に至る目的や理由をストーリーとして伝えている
商品購入後のベネフィット(ユーザーの利益)を伝えている
- 分類
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スペックやカテゴリーだけではなく、商品の利用目的で分類している(家族で使える、ギフトで贈れるなど)
- 全体のデザイン
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ECサイトのデザインが洗練されていて見やすい
人とのつながりや商品への熱量が感じられる
商品購入までの安心感
ECサイトは対面販売ではないため、商品に対する安心感を持ってもらうことが大切です。 安心感を伝える要素をまとめました。
- 写真
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写真から商品の使用感やサイズ感がわかる
一目見ただけで中身や内容量がわかる
写真のモデルから重さや大きさがわかる
商品本来の色がはっきりとわかる
素材の質感や商品全体の雰囲気が伝わる
- レビュー
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ユーザーの商品レビューはリアリティや信頼性が高い
口コミや商品レビューで購入を決める方は多い
- 看板部分
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ヘッダー部分に店舗名や問い合わせ先が記載されている
一目でどんな店舗か、どこに連絡すべきかがわかる
- 取引情報
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どのページからでも送料・支払方法・取引期限などを確認できる
返品・キャンセルの可否やルールがきちんと記載されている
商品のスペック(サイズ・重量・素材など)が記載されている
在庫の有無がカラーやサイズごとに明記されている
商品を発送するときの荷姿(梱包方法・梱包サイズなど)がわかる
- 店舗情報
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実店舗の情報(写真・住所など)が掲載されている
スタッフの情報(写真・名前・担当など)が掲載されている
スタッフの想いやこだわり、出店の経緯が紹介されている
客単価

客単価の施策を講じれば、1回の受注でより高額な購入をしてもらえる可能性が高まります。客単価アップのカギとなる要素は、下記の3つです。
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アップセル
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クロスセル
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レコメンド
こちらも詳細を解説していきます。
アップセル
アップセルとは、ユーザーが購入している、購入を検討している商品より「上位品」を提案して、そちらを購入してもらうことです。
高品質・高機能といった魅力をアピールすることで、高額でも購入を促せるので、客単価の向上につながります。
特に自社ECサイトの場合、ユーザーも専門性が高い商品を探しに来店されているため、価格に見合った価値を伝えれば、ニーズを刺激できるでしょう。
アップセルの施策例は以下の通りです。
- 松竹梅作戦
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同じ系列の商品を松・竹・梅のランクで分ける
ユーザーの多くは真ん中の「竹」を狙う習性がある
- 無料お試し期間
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ユーザーの商品レビューはリアリティや信頼性が高い
- キャンペーン
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ユーザーの商品レビューはリアリティや信頼性が高い
クロスセル
クロスセルとは、ユーザーが購入を検討している商品と関連する「隣接品」を提案して、ついでに購入してもらうことです。
セットで使うと効果が高まったり、いずれ必要になりそうな商品を紹介したりすることで、客単価アップを狙います。
クロスセルの施策例は以下の通りです。
- セット販売
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ファーストフードでポテト・ドリンクセットを勧める
- セット割引
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ゲーム機本体とゲームソフトをセットで購入したら割引適用になる
- オプション
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ギフト包装サービスや保証期間延長などを勧める
レコメンド
レコメンドとは、ユーザーの購入履歴やページ閲覧履歴に基づいて、おすすめ商品を提案することです。
「この商品を購入した方は、こちらの商品もチェックしています」などと提示して、関連商品の購入を促すので、クロスセルの一環といえます。
レコメンドの施策例は以下の通りです。
- レジ前レコメンド
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カート内画面でよく一緒に購入されている商品を提案
- メール配信レコメンド
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ユーザーの行動に合わせてメールでおすすめ商品を提案
にぎわい

最後にご紹介するにぎわいは、これまで解説してきた集客・転換・客単価のすべてを加速させる重要な要素です。
ECサイトからにぎわいが感じられると、ユーザーが来店する可能性はもちろん、購買転換・高額購入に至る可能性も高まります。
ECサイトのにぎわいに必要な要素は、下記の3つです。
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サイトデザイン
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更新頻度
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顔写真
これらの詳細もまとめました。
サイトデザイン
ECサイトでにぎわいを出すためには、まずサイトデザインの見栄えが重要です。ことです。
商品の画像がたくさん設置されていて、レイアウトや色合いも調整されていると、ユーザーに「華やか」「明るい」といったプラスの印象を与えられます。
その結果、集客や転換にも良い影響が見込めます。
一方、必要最低限の画像だけ置いて、文章量が多いページは「寂しい」「暗い」といったマイナスの印象を与えてしまいます。
店舗に対する信頼感も下がってしまうので、来店数減少やかご落ちにもつながりかねません。
視認性や操作性も考慮しながら、サイトデザインを洗練させましょう。
更新頻度
人は変化がある物事を好む傾向にあるので、サイトの更新頻度も重要です。
1年に数回しか更新されないサイトと、1カ月に何度も更新されるサイトでは、来店数や売り上げに大きな差が生じることもあります。
新商品発売や再入荷のお知らせはもちろん、最新の売れ筋ランキングやセール・キャンペーンの案内なども含めて、こまめに更新することを心がけましょう。
また、ユーザーから届いた商品レビューもよく確認されるポイントなので、最新のレビューを掲載したいところです。
顔写真
にぎわいを演出するうえで、もう一つ重要なものが顔写真です。
たとえば、商品への想いや自前レビューを掲載する場合、スタッフの顔写真も添えておくと、内容を詳しく読まずとも雰囲気が伝わります。
逆に顔写真がなく文章だけの場合、ユーザーが興味を示す確率が低くなるでしょう。
自社の商材にあった方法でECサイトを運営しよう
ECサイトは大きく分けると、自社EC型とモール型の2種類があります。
どちらを選ぶべきかは取り扱う商材によって変わりますが、自社のブランドや商品に自信がある、専門性がある場合は「自社EC」での運営をおすすめします。
今回はECサイト運営における基本やちょっとしたコツをお伝えしましたが、これらはほんの一部です。
WCAでは、自社EC運営にまつわるコンサルティング、サイト制作、広告運用などを幅広く行っていますので、お気軽にご相談ください。