LTV分析や計算方法とは?ECサイトの価値を中長期的に上げるマーケティング論

ECマーケティング

インターネットの普及による競争激化や、人口減による小売業界の縮小傾向などによって新規顧客獲得のコストが増すなか、LTV(顧客生涯価値)を重要視する企業が増えています。
EC事業においても、LTVは大切な指標です。
そこで本記事では、LTV分析の意味や算出方法などの基礎知識から、EC事業においてLTVを高めるマーケティング手法や、現場レベルで導入できる具体例まで解説します。

LTV分析とは

LTV(Life Time Value)は「顧客生涯価値」とも呼ばれ、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、顧客から得られる利益の総額を表す指標です。
LTV分析をすることで、下記のようなメリットに繋がります。

自社EC型とは、独自のドメインを取得し、自社でECサイトを運営することです。
実店舗にたとえるなら、街中の通りに面して出店する“路面店”のイメージが当てはまります。
また、大きく分けると4種類の構築方法があることも自社EC型の特徴です。

・リピーター獲得率の向上

・新規顧客獲得コストの軽減

・優良顧客の可視化

・売上向上につながる商品の見極め・選定

・導線の改善・購買フローの再構築

顧客管理システムやWebのアクセス解析ツールなどを活用したWebマーケティング特有のLTV分析のスキルは、今後さらに必須となってくるでしょう。

ECにおけるLTV分析の必要性

LTVの向上は、顧客が自社と取引する回数や期間が増えることを意味します。つまり、リピーターが増えるということです。
リピーターを増やす施策を続けると、次第に顧客ロイヤリティが向上し、将来的にLTVが高いファンの育成にもつながります。
そして、リピーターの獲得は新規顧客の獲得に比べて少ないコストで済むため、収益性の改善が見込めるでしょう。
併せてECサイトの導線を改善したり購買フローを再構築したりすることで、顧客獲得率(CVR)を上げれば、さらに効果が高まります。
LTVの向上は、EC事業の拡大や企業の成長にもつながるサイクルを生み出す重要な指標です。
そのため、詳しく分析して自社の課題を見つけ、LTVを向上するためのさまざまな施策の実施が求められるのです。

LTVを算出する方法

LTVを算出する最も基本的な計算式は以下のとおりです。

LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続購入期間

たとえばECサイトの過去の売り上げにおいて、全顧客の平均購入単価が3,000円、購入頻度が年4回、継続購入期間が5年だった場合は、以下のように計算できます。

LTV = 3,000円 × 4回 × 5年 = 60,000円

この計算式は基本的な売上情報があれば容易に計算できるのがメリットで、不特定多数の顧客を持つECサイトや飲食店などでよく用いられます。
また、全体の収益性を検討しやすい特徴もあるため、まずはこの計算式で経営実態を把握してから部門やカテゴリーごとのLTV分析に移るのもよいでしょう。
一方、上記の式では顧客単位でのLTVは把握できないため、優良顧客の抽出や、顧客の行動パターンの分析などには向きません。
収益率も考慮されていないため、多様な商品を扱う場合や時期によって仕入れコストが変動するようなケースでは、実際にいくら利益が出たのか分析しにくいのがデメリットです。
収益率を加味した計算方法については下記にて2パターン解説していきます。

収益率でみるLTV計算方法

顧客ごとの収益性を加味して算出したいのであれば、以下の計算式が適しています。

LTV = 顧客の平均購買額 × 収益率 × 平均継続期間

具体例を見ていきましょう。

あるECサイトでの年間平均購入額が20,000円(1回5,000円×4回)、収益率が10%、平均継続期間が3年間だった場合

20,000円(5,000円×4回) × 10% × 3年間 = 6,000円

顧客1人あたりが平均して6,000円の利益をもたらしてくれていることがわかります。
また、年間平均購入額は上記のように「平均購入単価」×「平均購入回数」に分解できます。

この計算式をベースにKPIを設定し、施策の効果などを細かく検証していくのがおすすめです。
そのほかにも、中長期的な経営方針や戦略の策定、販促施策のPDCAなど、さまざまな問題点の発見や改善に役立ちます。

リピート商材におけるLTV計算方法

おすすめの計算式は以下のとおりです。

LTV = 1顧客の年間購買金額 × 収益率 × 1顧客の継続期間

具体例を見ていきましょう。

顧客A:30,000円 × 20% × 3年間 = 18,000円

顧客B:50,000円 × 30% × 1年間 = 15,000円

1年間の購入金額だけで見ると、顧客Bの方が単価も収益率も高く優良顧客に思われますが、中長期的な視点で見ると顧客Aの方が高い利益をもたらしてくれていることがわかりますね。

顧客Aのような顧客モデルが多いのであれば、アップセルやクロスセルによる客単価の引き上げをしたり、収益率を改善したりすることで事業全体の利益率が向上します。
逆に、顧客Bのような顧客モデルが多いのであれば、どうしたら長期間定期的に継続してサイトに訪問・購入してもらえるのか考える必要があります。
このように、リピート商材や定期購入(サブスク)において、優良顧客や離反顧客を特定し、改善策を立てていくのに役立つ算出方法です。

LTVの向上がECサイトのカギとなる時代へ

日本は人口減少の影響もあり、小売業界は総じて緩やかな縮小傾向にあります。その反面ICTの進化により、EC業界においては競争が激化しています。
楽天やAmazonなどのECモールでは、高度なスキルを持たない事業者でも簡単に店舗を立ち上げられるようになりました。
集客方法もマス広告に代わって、Web広告やSNSの活用が主流となり、誰でも比較的容易に顧客を集められるようになりました。
この結果、ECにおいて新規顧客獲得の競争は激化し、広告の費用対効果も上がりにくくなりました。
したがって中長期的に考えると、LTV向上=顧客満足度を上げて、顧客を店舗のファンにすることで、ECサイトの業績を安定して伸ばすカギとなります。
顧客のファン化、すなわちロイヤルカスタマー化は、価格競争も避けられます。
また、既存顧客への施策は「1:5の法則」で知られるように、新規顧客獲得施策の5分の1程度のコストで済む傾向があるため、収益性の改善も見込めるでしょう。

自社ECサイトのLTVを上げるにはカスタマーマーケティングが重要

ECサイトにおいてLTVを上げるために重要なのは、カスタマーマーケティングです。
カスタマーマーケティングとは、顧客の行動やニーズに基づいてパーソナライズされた営業活動であり、「One to One(ワントゥーワン)マーケティング」とも呼ばれます。
カスタマーマーケティングにおいては、顧客ごとの属性や行動履歴などからニーズを推測し、個別化したアプローチをしていくことが大切です。
次項から解説するLTV向上施策も、カスタマーマーケティングと関連付けることで、より効果を高められるでしょう。
競合他社よりも顧客に寄り添ってアプローチすることで、売上アップにつながるはずです。

LTVアップにつながるECマーケティングの具体的な施策

LTVを向上させるために、以下4つのポイントを主軸に施策を考えましょう。

【LTVアップのための4つのポイント】

購入単価を上げる

購入頻度を増やす

顧客ロイヤリティを向上させる

顧客獲得率を上げる

それでは、各施策について具体例を挙げながら解説します。

購入単価を上げる施策例

購入単価を上げるには、関連商品をセットで購入してもらうクロスセルと、より高額な上位モデルを選んでもらうアップセルの2つの手法が一般的です。

【クロスセル】

関連商品のレコメンド
属性やアクセス履歴を元に個別化したレコメンド情報を表示して、追加購入を促す

セット購入の提案
一緒に購入される傾向が高い商品をセットにして販売する

セット割引
まとめ買い割引などで、購入点数を引き上げる

送料施策
「5,000円以上で送料無料」「1万円以上購入でクーポンプレゼント」などの施策で、追加購入を促す

付帯サービスの提案
名前の刻印サービスや木箱の追加などのサービスを有償で提供する
【アップセル】

上位品の提案
購入時やリピート購入のタイミングで、より高スペックかつ高単価な商品を提案する

高付加価値の追加
オーガニック、限定品など、所有欲を喚起するような商品を企画、販売する

まとめ買いの促進
同一商品をまとめ買いすることで、割引などを行う

アップセルではアプローチが適切でないと、顧客に不快感を持たれる恐れがあるので注意が必要です。
ユーザーニーズに合った商品を顧客目線で丁寧に説明しなければ、多くの場合、アップセルにはつながりません。
また、クロスセル施策でも、通常価格に割高感が出ると購買数自体が減るリスクがあります。料金体系が複雑になったり、情報過多でサイトが見にくくなったりしないよう、配慮するべきでしょう。

購入頻度を増やす施策例

購入頻度こそ、前述したカスタマーマーケティング(CRM)による顧客のファン化が重要になってきます。
新規顧客にリピートしてもらうことはもちろん、店舗のファン(固定客)になってもらうには、3回以上の購入につなげることが重要です。
そのためには、下記のような施策が挙げられます。

【購入頻度を上げる6つの施策】

1.適切なレコメンド施策
再来店時に顧客属性や購入履歴に基づいた商品のレコメンドを行う

2.メルマガ配信
顧客情報を元にセグメント化されたメルマガで商品をレコメンドするなどし、来店頻度を上げる

3.ステップメール
シナリオ化されたメールを個別に送ることで、顧客のタイミングに合わせてリピートを促す

4.リターゲティング広告
リピート購入を促す広告を配信する

5.リピーター向けの商品企画
購入品と関連性の高いアイテムや詰め替え用などの補填アイテムを企画、販売する

6.シーズナリティな提案
季節商材や季節商戦(セール)に乗じて、来店してもらう

購入頻度を上げるためには、顧客を追跡して適切なタイミングでアプローチする必要があります。CRMツールなどを導入すれば、比較的容易に取り組むことが可能です。

顧客獲得率を上げる施策例

収益率まで加味してLTVを計算している場合、顧客獲得率(CVR)を上げる施策も大切です。
顧客獲得率が上がる=獲得に必要な広告などのコストが下がることにつながります。
そのために重要な施策例を3つの軸に分けてご紹介します。

【1:SEO強化例】

適切なキーワードをサイト内に多く配置する

必要なメタ情報を正確に記載する

【2:分析に基づいたECサイトの改善例】

導線の改善(直帰率、離脱率の低下)

EFO最適化

かご落ち対策

決済方法を増やす

【3:広告の最適化例】

パーソナライズされた広告配信

購入につながりやすいLPの作成

ABテストの実施

SEOは、コンテンツ制作やECサイトの内外からの構成変更などの手間や時間はかかりますが、広告費がかからないため、長期的に見れば効率的な顧客獲得につなげられる可能性があります。
ECサイトの改善例として、たとえばサイトの見やすさや導線を見直して購入率を高めることのほか、支払い方法を増やして顧客層を広げることが効果的です。
また、カートに商品を入れたものの離脱する「かご落ち」の対策には、注文画面での入力の手間を省く(EFO最適化)、送料を下げる、フォローメールを送信するなどの施策が考えられます。
これらのほか、広告やランディングページ(LP)の品質向上も重要です。
たとえば、Web広告ではABテストを実施してユーザーの反応がよかった方を採用しながら、ブラッシュアップを図ります。
Web広告の広告文と、ランディングページ(LP)の内容の統一性を高めることでも、顧客獲得率を高められるでしょう。

顧客ロイヤリティを向上させる施策例

顧客ロイヤリティとは、自社や自社商品に対する愛着や信頼感のことです。
顧客ロイヤリティを持ってもらえれば、LTVが高いファンになってもらえます。
こうしたロイヤルカスタマーは、純粋なリピーターとは異なり、他者にも商品購入を勧める傾向があるため、口コミ効果や顧客紹介を期待できるのが特徴です。
具体的には、以下のような施策を実施します。

【顧客ロイヤリティ向上の施策例】

顧客ランク制度の導入
顧客リストを作成し、ランクに応じた特典などを付与して特別感を持ってもらう

SNSの運営
SNSを使ったコミュニケーションによって、親近感を持ってもらう

カスタマー対応の強化
コールセンターの設置、FAQページの整備など、サービスの質を高める

チャットボットの導入
1対1での接客体験による特別感や利便性の向上

顧客ロイヤリティを向上させる重要なポイントは、顧客一人ひとりに合うように、情報配信や訴求ポイントを整理することです。
これができると、顧客は「自分のことを企業が理解してくれている」「大切に思ってくれている」と考え、ロイヤリティが醸成されます。

マーケティングを強化しLTVを高めよう

小売業界が緩やかな縮小傾向にある一方、オンライン上での競争が激しくなったことから、既存顧客を重視するLTVの重要性が高まっています。
LTV分析を取り入れて、購入単価や購入頻度、継続期間などポイントごとに課題を見つけ、中長期的な経営の安定と成長につなげていきましょう。

ECサイトでお困りなら、
WCAにご相談を。

「売れる」サイト制作から運営代⾏・集客施策、恒常的なコンサルティングまで、クライアントに寄り添いながら課題を解決していくのがWCAのトータル⽀援です。ECサイトでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

平谷 淳一(ひらたに じゅんいち)

株式会社WCA 取締役 | 総合広告代理店を経て2009年入社。弊社ではメディアプランニング・バイイング業務からスタートし、アドネットワーク、DSP、SNSなどの広告運用やSEO、記事LP制作、システム構築など幅広い領域に従事。現在は広告運用部門・制作部門の統括責任者として、実際に売り上げをあげられる広告・制作体制の整備に奮闘中。

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