知らないと危険?ECサイトの売り上げを伸ばすCRMマーケティング|具体的な手法や事例5選

ECマーケティング

ECサイト運営

本記事では、ECサイト運営をしている中で一度は耳にしたことがあるであろう「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)マーケティング」について解説します。

  • CRMマーケティングが重要視されている4つの理由
  • CRMを活用し売り上げがアップした5つの事例
  • リピーターの育成や使用した手法・事例

など、ECサイト運営の中で実践すべきCRMマーケティングについての情報を集約しています。

CRMマーケティングの導入をご検討中の方や、CRMマーケティングに興味のある方は、ぜひご参考にしてください。

CRMマーケティングが"今"重要視されている理由4つ

「CRMマーケティング」がなぜ今重要視されているのか、次の4つに分けて理由を解説します。

【理由1】EC化率の加速
【理由2】人口が減り続けている
【理由3】商業のルールが変更になった
【理由4】広告宣伝の効果が逓減してきた

CRMマーケティングが重要視されている背景を知ったうえで、導入をご検討してください。

【理由1】EC化率の加速

CRMマーケティングが重要視されている理由の一つに、「EC化率の加速」が挙げられます。

経済産業省が2021年7月30日に発表した、「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」のデータによると、新型コロナウイルス感染拡大に伴う市場の変化により、物販系分野のEC化率は大幅に向上しました。

一方、自粛の呼びかけによる市場の変化によって、旅行業などを含むサービス分野の市場規模は鈍化しています。

2019年2020年伸長率
A. 物販系分野10兆515億円
(EC化率 6.76%)
12兆2,333億円
(EC化率 8.08%)
21.71%
B. サービス系分野7兆1,672億円4兆5,832億円▲36.05%
C. デジタル系分野2兆1,422億円2兆4,614億円14.90%
総計19兆3,609億円19兆2,779億円▲0.43%

引用:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

【理由2】人口が減り続けている

日本国内における人口減少もCRMマーケティングが重要視されている理由の一つだといえます。

従来のマーケティングでは、新規顧客をどれだけ集客できるかが重要だとされていましたが、人口が減った現代では、既存顧客のLTV(Life Time Value)をどれだけ伸ばすことができるかがポイントです。

【2022年(令和4年)1月1日現在(概算値)】
<総人口>1億2,544万人で、前年同月に比べ減少 ▲63万人(▲0.50%)

【2021年(令和3年)8月1日現在(確定値)※】
<総人口>1億2,563万3千人
・15歳未満人口は1,482万9千人で、総人口に占める割合は11.8%
・15~64歳人口は7,461万5千人で、総人口に占める割合は59.4%
・65歳以上人口は3,618万9千人で、総人口に占める割合は28.8%
<日本人人口> 1億2,289万8千人
※平成27年(2015年)国勢調査基準の人口である前年同月との比較ができない。

引用:人口推計 -2022年(令和4年)1月報-

【理由3】商業のルールが変更になった

近年、各分野の市場において商業のルールが変更になったことによって、CRMマーケティングの重要性が高まったことも考えられます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進などによって、社会のデジタル化が急速に進んだ結果、商業フローが大きく変化しました。

具体的には、従来はバラバラに管理されていた、情報や流通、販売、決済など、一連の商流がすべてスマートフォン上で完結できるようになったことが理由だといえます。

【理由4】広告宣伝の効果が逓減してきた

CRMマーケティングが重要だとされる背景の一つに、従来のマーケティングにおいて効果が高かった「広告宣伝」だけでは効かなくなったことが挙げられます。

インターネットが普及し始めてから、市場には多くの情報が溢れており、現在では人間が消化できる情報量の4~5倍にも上っていると言われています。

このように、情報過多の時代だからこそ、単純な広告宣伝だけではなく、顧客の購買行動に関するプロセスに対応したCRMマーケティングが欠かせません。

CRMマーケティングの具体的な流れ

CRMマーケティングを実施する場合、大きく分けて「顧客情報の獲得」「分析」「顧客へのアプローチ」という3つのプロセスが必要になります。

さらに、これらのプロセスを実現するためには、CRMツールを使うのが一般的です。本章では、CRMマーケティングの具体的な流れを解説しますので、ぜひ参考にしてください。

顧客情報獲得

■顧客情報獲得のフロー

1.会員登録・メルマガ登録などに誘導して顧客情報獲得
2.実店舗の場合、POSデータ・ポイントカード・会員証から顧客情報獲得
3.顧客の趣味や性格、興味関心などのサイコグラフィックデータを獲得
4.サービス・商品に対する購入頻度や検討状況などの行動データを獲得

CRMマーケティングを実施するうえで、最初に必要なのが「顧客情報」の獲得です。

顧客リストに対してマーケティング施策を実施するため、アプローチするための情報を収集する必要性があります。

1番大切なのは「受注データ」にてなるべく顧客の属性や購買行動を獲得し、社内でわかりやすく一元管理することです。

それ以外にもツールを使用することで、さまざまな顧客データを取得することが可能です。

分析

CRMにおいて役立つ分析手法

1.RFM分析
2.デシル分析
3.セグメンテーション分析
4.LTV分析

アプローチするべき顧客情報を収集することができたら、次に情報を分析してどのように活用するかを検討する必要があります。

すべての顧客に同じ施策でアプローチするのではなく、顧客の属性に合わせてパーソナライズしたアプローチを実施することがCRMマーケティングでは重要です。

たとえば、獲得した顧客情報に対して年齢層や居住エリア、過去の購買情報などを元にセグメントをかけます。

セグメント分けしたデータを元に、どのような傾向があるのかを分析したうえで、マーケティング施策を検討することがポイントになるでしょう。

また、RFM分析やLTV分析を活用して優良顧客やランクアップ見込みのある顧客を判別することも大切なプロセスとなります。

【データを元に顧客へアプローチ

顧客にアプローチするフロー

1.抽出・分析したセグメントに応じた施策を検討する
2.検討した施策を実行する
3.実行した結果を分析し、改善施策を検討する
4.検討した改善施策を実行する

顧客情報の分析を実施し、セグメント分けができたら施策を実行していきます。

セグメントに応じて企画・立案した施策を元に対象顧客にアプローチし、反応を見ながら効果を最大化できるよう最適化を目指します。

施策は、一度実行したら終わりではなく、実行して得られたデータを元にPDCAを回すことがとても重要です。

顧客にアプローチするための具体的な施策例は、後述の章で解説していますので、そちらを参考にしてください。

CRMマーケティングの6つの手法

CRMマーケティングを実施するうえで、知っておきたい6つの手法を解説します。

  1. ステップメール(フォローメール)
  2. 同梱チラシ
  3. はがきDM
  4. カゴ落ち対策
  5. レコメンド
  6. ポイント、クーポン施策

ステップメール(フォローメール)

ステップメールとは、購入してくれた顧客に対して、サイトへの再訪問や再購買を促すためのメールを送る手法です。

「いつ、どのタイミングで」「誰に」「どんな内容のメールを」「何回」送信するのか事前にシナリオを決めて、自動で配信します。

顧客属性や顧客ランク、購入した商品に応じてパーソナライズ化された内容を送ることで、同じ内容のメルマガを一斉配信するよりも効果が高まります。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・購入直後の顧客には、お礼やお届け日についての連絡を入れる
・商品が届いたころ、ワインの美味しい飲み方に関する知識を配信する
・2週間後、次回購入時に使用できる10%オフクーポンを配布する
・休眠顧客に対しては、お得な限定クーポンの配布や購入履歴に基づくおすすめワイン情報を送ってアプローチする

■結果
フォローメールをしっかり行う店舗と、行っていない店舗では3年で3倍以上の売上差がついた。(※自社調査)

同梱チラシ

ECサイトの場合、商品と一緒に同梱チラシを添えることによって、2回目以降の購入を効果的に促進することができます。

商品が到着したばかりの顧客が一番ホットな状態のときに、ピンポイントでアプローチできることが最大のメリットといえるでしょう。

こちらも、顧客の属性や購入商品に応じて内容を変更するのが望ましいです。

購入商品のアップセル、クロスセルになるような商品の案内や、クーポンなどの特典を入れることで、より高い効果が期待できます。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・初回購入顧客には、感謝の気持ちを綴ったカードを同梱する
・購入したワインの種類(赤、白)や産地に基づき、おすすめな他のワインのカタログを同梱する
・ワインに合わせたおすすめのおつまみカタログを同梱する

■結果
新規顧客に対しては、メールによるフォローだけでなく、チラシの同梱も行うことで、よりリピート率がアップした。

はがきDM

CRMマーケティングでは、オンライン上の施策以外にもはがきDMなどのリアルマーケティングも効き目の高い手段の一つになります。

フォローメールやステップメールとは違って、はがきDMを開封してくれる顧客は、商品購入の確度が高いといえるでしょう。

個人名の宛名が入っていて、中身も自分個人宛の情報だとわかる内容にするのがおすすめです。

特にファミリー層や高齢層、地方に住む顧客へのアプローチとしておすすめの手法です。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・新規購入顧客に対して、購入の1ヵ月後にはがきDMを送付
・圧着式のはがきを使用し、内面にポイント残高やポイントの有効期限、おすすめ商品などを記載
・QRコードを記載することでわかりやすくサイトへ再誘導し、効果も測定できる

■結果
50代以降の顧客において、リピート率が向上した。

カゴ落ち対策

ECサイトにおけるカゴ落ち率は約70%(※)ほどあるとの調査結果が出ています。
※https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate

商品をかごに入れたまま購入せずに放置されている場合、買い忘れがないかの確認をメールやリターケティング広告を活用してお知らせするようにしましょう。

カゴ落ちカゴ待ち状態の顧客を把握するには、そのような機能がついたASPカートを利用するか、カゴ落ち対策専用のツールを導入するのがおすすめです。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・ワインをカゴに入れたまま3日以上経過している顧客情報を収集
・カゴ落ちして3日以上経過した顧客に、「お買い忘れはございませんか?」「◯◯様に、おすすめの赤ワインがあります。」といったタイトルのメールを配信
・さらに、リターゲティング広告でカゴに入れた商品を表示する

■結果
カゴ落ち率が5%ほど改善した。

レコメンド

レコメンドとは、顧客の購入履歴や閲覧履歴などの行動を元に、おすすめの商品情報を提示することを言います。

一般的によく同時購入されている商品をおすすめしたり、顧客の好みに合わせたパーソナライズ化された商品を提示することで、リピート率がアップします。

提示方法としては、「決済前後の画面で表示」「商品ページで表示」「メール配信」や「リターゲティング広告」などがあげられます。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・商品ページにて、「こちらの商品もよく購入されています」と記載して似た種類のワインを提示
・カート画面で、栓抜きやおすすめのおつまみを紹介してクロスセルをはかる
・購入後のフォローメールで、「あなたにおすすめのワイン」として似た種類のワインを提示

■結果
サイトへの再訪問率や、回遊率がアップし売上に繋がった。

ポイント、クーポン施策

CRMマーケティングでは、購入する際のメリットとしてポイントやクーポンを活用した施策が有効です。

ただ商品を購入してもらうだけではなく、次回の購入に使えるポイントを付与する方法や、次回購入時に活用できるクーポンを配布するなどの方法があります。

これらは同時に行う必要はなく、まずはポイント付与、活用に関してのお知らせメールをしっかりと配信することが大切です。

休眠顧客や優良顧客になりそうな3回目購入客などに対して、「送料無料」「10%オフ」などのクーポンを発行するのがおすすめです。

■ワイン専門店の具体的な施策例
・RFM分析を元に顧客をセグメント化し、休眠顧客に対して送料無料クーポンを配布
・顧客ランクの高い顧客には、ポイント2倍キャンペーンを実施してリピート購入を促した

■結果
頻繁にセールを実施するよりも、低コストで購買率がアップした。

CRMを活用し売上がアップした事例5つ

CRMマーケティングを活用して売上がアップした事例を5つご紹介します。

リピーターの育成

リピーターの育成を行うことがCRMマーケティングにおいて一番重要な目的です。総合ECサイトの改善施策例をご紹介します。

事例紹介「日用品に関する総合ECサイト」の場合

【店舗の悩み】
リピート率の低さ

【原因】
購入回数分析を行った結果、2回目購入がほとんどないことが判明
→購入商品や顧客属性に応じた個別のフォローが出来ていない

【店舗の行った施策】
・フォローメール
・レコメンド
①購入商品のジャンルに応じて、「商品の活用方法、裏技」などの知識をメールで配信
②一緒に使うとおすすめの商品、を上記メール内に記載

■結果
リピート率が130%アップした

休眠顧客へのアプローチ

休眠顧客(以前購入したことがあるが、一定期間購入やアクセスがない顧客)は、何かしらのきっかけでリピーターに繋がる可能性が高い、重要な顧客です。

しっかりアプローチしていきましょう。

事例紹介「化粧品ブランド」の場合

【店舗の悩み】
休眠顧客にアプローチしたいが、効果的なやり方がわからない

【原因】
・休眠顧客の定義づけ(数値による明確なセグメント化)ができてない
・休眠顧客に特化したアプローチをしていない

【店舗の行った施策】
・RFM分析による休眠顧客の明確化
・フォローメールの配信
①過去に売れ筋商品の購入履歴があるが、1年以上再購入がない顧客を抽出
②抽出した顧客に対して、特別価格(20%オフ)でのオファーメールを配信
③その後も毎月、ステップメールを配信しリマインド

■結果
休眠顧客12%の引き上げに成功

クロスセル、アップセルの向上

顧客のLTVを高めるために、クロスセルとアップセルの向上を目指します。

アパレル通販サイトの改善事例を見てみましょう。

事例紹介「アパレルECサイト」の場合

【店舗の悩み】
1回の購入での平均購入点数が低く、客単価やLTVが低い

【店舗の行った施策】
・ステップメール
・レコメンド
①アップセル、クロスセル率が高い商品、組み合わせを分析
例1:TシャツAとスカートCの合わせ買いが多い
例2:TシャツAを購入した顧客は後日アウターを買いに来ることが多いTシャツAを購入した顧客は後日アウターを買いに来ることが多い
②商品ページにて同時購入が多かった関連商品をレコメンド
③ステップメールにて後日購入が多かった商品をレコメンド
④メール送付の最適なタイミングはいつなのか、効果測定を実行

■結果
転換率が143%アップ

リアル店舗との連動

リアル店舗を持っている企業では、自社ECとリアル店舗が連動したCRMマーケティングを実施することが重要です。

今回は、化粧品ブランドにおけるリアル店舗との連動施策例をご紹介します。

事例紹介「化粧品ブランド」の場合

【店舗の悩み】
ECサイトとリアル店舗それぞれが保有する顧客情報が連動していないため、来店顧客のステータスがわからない

【店舗の行った施策】
・顧客データの一元化
・RFM分析
・はがきDM
・ポイント施策
①POSデータとECの受注データをツールを使用して一元化
②ポイントシステムも一元化
③店舗ごとに優良顧客を把握し、新商品案内やポイント残高などのはがきDMを送付
④店舗でのポイントカードの提示により、リピート顧客の過去の購買行動を判別し、声かけを実施

■結果
LTVが約1.3倍に成長

LTVの引き上げ

特に定期購入商材において、LTVの引き上げは非常に重要度が高いです。今回は、健康食品を取り扱うECサイトの改善例をご紹介します。

事例紹介「健康食品販売のECサイト」の場合

【店舗の悩み】
サプリメントの定期購入の解約率が高く、LTVが伸び悩んでいる

【店舗の行った施策】
・RFM分析
・アンケートの実施
・クーポン施策
①RFM分析をした結果、顧客全体の約30%が解約予備軍となっていることを特定
②休眠顧客にアンケートを実施し、解約の主な原因は価格が高いことであると判明
③解約の多いタイミングである3回目、5回目購入時に特別割引クーポンを配布することで、解約率が減少

■結果
解約予備軍の解約率が減り、LTVが130%アップした

CRMマーケティングの効果を最大化するために知っておきたいこと

CRMマーケティングというと、CRMツールを導入すればOKといった考えに及びがちです。

ですが実際は、CRMツールを導入した約9割のECサイトが「CRMツールを導入しても上手く活用できていない」(※)実態があります。
※https://actionlink.jp/2020/03/16/eccrm/

設定が難しい、リソース(人手、時間)が足りない、プランニングが上手くできない、などが主な理由です。

このような状況にならないために、実際の運用を想定したデータ基盤を検討しておきましょう。

また、どのCRMツールが自社に合っているのかを見極めるのもなかなか困難です。

CRMマーケティングに関するノウハウやリソースが不足している場合は、知見のあるコンサルタントに依頼するのもおすすめです。

WCAでもCRMに関するコンサルティング実績がございますので、お気軽にご相談ください。

CRMマーケティングの導入は必須!適切な施策を行って効果を最大化しよう

CRMマーケティングは、現在売上が伸び悩んでいる、リピーターが増えない、などのお悩みを抱えているEC事業者の方こそ、取り組むことをおすすめします。

末永くサイトをご愛顧いただき、顧客のファン化を加速させるためにCRMは必要不可欠といっても過言でありません。

施策を実践するためには、ツールの導入だけではなく効果的に運用することが大切です。

今回ご紹介した事例を元に、自社にあった取り組み方法を検討してみてくださいね。

ECサイトでお困りなら、
WCAにご相談を。

「売れる」サイト制作から運営代⾏・集客施策、恒常的なコンサルティングまで、クライアントに寄り添いながら課題を解決していくのがWCAのトータル⽀援です。ECサイトでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

青嶋 剛史(あおしま たけし)

株式会社WCA ゼネラルマネージャー | 大学卒業後、現P&Gジャパンに入社し、営業やトレードマーケティングに従事。その後アマゾンジャパンやアリババジャパンの事業責任者を歴任、CEOとして中国企業の日本法人立ち上げも経験。ECのみではなくマーケティングや販売戦略など幅広い領域でのコンサルティングサービスに対応。

関連記事

最新記事

人気記事