GA4のクロスドメイン計測で課題を発見!設定方法とトラブルの対処方法
ECサイト分析
GA4にて、2つ以上のドメインを1つにまとめて管理できるクロスドメイン計測の設定。1人のユーザーの行動範囲を正確に把握して分析するためのマーケティングに欠かせない測定方法です。
Webサイトの課題が正しく分かることで、効率よく改善できたり顧客満足度が向上したり。ユーザーの一連の体験が可視化されるため、今まで見えていなかった新しいニーズが浮き彫りになることも期待できます。
ここでは、
「クロスドメインの設定って必要?」
「どうやって設定すればいい?」
「うまくいかないときは?」
と気になるあなたへ、GA4にてクロスドメイン計測の設定をするメリットや必要・不必要の具体例をご紹介。クロスドメインの仕組みも理解して、設定や動作確認をスムーズに進めていきましょう。
トラブル例とその対処法もお伝えするので、今「設定したのにうまくいかない」と困っている方にもぜひ読んでいただきたい情報です。
目次
GA4のクロスドメインの設定でユーザー行動を正しく計測しよう
クロスドメインはユーザー行動が正確に把握できない状態
クロスドメインとは、1つのWebサイトで複数のドメインがまたがっている(交差している)こと。1人のユーザーがほかのドメインに移動すると、計測上ではアクセスした人が2人だとみなされてしまう状態です。
例えばこちら。
- 本体のWebサイト「http://www.top.com」
- 予約サイト「http://www.reservation.com」
ドメインは「http://」の後ろにある文字列のことで、Webサイトがインターネットのどこにあるかを判別する情報。同じWebサイトでもインターネット上の住所が違うため、ユーザーがそれぞれに訪問したとカウントされてしまいます。
【自然検索>商品ページ>予約フォーム】
流入元が変わるため、例えば上記のような流れを通ったユーザー行動が正確に把握できません。予約フォームはランディングページですが、セッションが切れるため新しいアクセスが始まったと判断されてしまいます。
もともと、ドメインを分ける理由は以下のとおり。
- 外部サイトを利用したい
- 制作時間やコストを削減したい
- ブランドごとにデザインやマーケティング施策を分けたい
利便性が高くSEO対策に大きなメリットがあるとはいえ、興味をもって閲覧を続けていてくれるユーザーが離脱したとなるとデメリットも。本来の参照元の情報や一定期間内に訪れたユーザー数が正確に分析できなくなります。
GA4のクロスドメイン設定でWebサイトの課題が浮き彫りに
GA4にてクロスドメインを設定すると、異なるドメインをまたぐユーザー行動が一連のアクセスとして計測可能に。Webサイト内の別ページに移動した流れと同じように測定されます。
ユーザー行動の分析に活かせる情報が入手できるクロスドメイン計測の設定。集めたデータに基づいて、例えば以下のようなメリットが得られます。
- 顧客のニーズを正しく理解できる
- 見えていなかった新しいニーズが浮き彫りになる
- 意思決定をするマーケティングや経営の手法が実現できる
Webサイトの運営は、勘や経験だけの判断では精度が低くなりPDCAを回すのも非効率的。クロスドメイン測定で集めた正確なデータを継続的に分析して蓄積することで、現在のWebサイトの正確な課題が浮き彫りになります。
また、商品やサービスを利用した顧客視点での体験ができるため「どのように利用しているか」「困っているのはどんな点か」などが把握でき改善へと導けます。満足度の高い新しいプランを思いつき、ヒットにつながる可能性も期待できます。
ユーザーが求める商品やサービスを高確率で提供できれば、顧客満足度や顧客ロイヤリティがアップ!長期的なビジネスの成長へとつながります。
クロスドメイン計測の設定はどんなときに必要?
クロスドメイン計測の設定は、必要なケースと不要なケースがあります。まずは、必要なケースから具体例を見ていきましょう。
外部サイトとつながっているとき
Webサイトの決済・顧客管理・認知後アップのため、Webサイトとは別のサイトと連携しているケース。例えば以下のようなものが該当します。
- Webメール
- SNS(Instagram、X、LINE など)
- ECサイト(商品を販売しているサイト)
- 口コミサイト(口コミが投稿できるWebサイト)
- 予約サイト(オンライン上で予約ができるWebサイト)
- 支払いサービス(インターネット上で決済ができるサービス)
クロスドメイン計測の設定をすると、メールでの問い合わせ・見積もりまでの流れや、来店予約・購入までの流れなどが正確に計測できます。
コーポレートサイトとサービスサイトを分けているとき
ユーザーのターゲットや運営の目的が違うため、事業ごとにサイトを分けているケース。
例えば、以下のようなものが該当します。
- 商品やサービスを紹介するサービスサイト
- 会社概要や社員紹介を載せるコーポレートサイト
ヘッダーやサイドバーなどにサイト間を移動できる導線(リンク)があり、お問い合わせ先や予約フォームが移動先のWebサイトにあれば設定が必要です。
それぞれに入れるコンテンツが違うため、ユーザーにとってわかりやすいサイトになる一方で、分析の手間が増加するのがデメリットです。
クロスドメイン計測の設定が不要なときは?
クロスドメインの設定が不要なケースについて、具体例を見ていきましょう。
各ドメインのページ間に導線がないとき
複数のドメインを所有していても、それぞれのページ間に導線(リンク)がなければ設定不要。例えば、以下のようなものが該当します。
- 完全に別のページ
ユーザーを目的地まで誘導するための道順ではないため、クロスドメインの設定でまとめて管理する必要はありません。
GA4でサブドメインと同一タグを設置しているとき
ドメインの種類の1つ「サブドメイン」があるケース。本体のドメインとCookie(アクセス情報)が共有されるため、GA4で同一のタグを設置すればクロスドメインの設定は不要です。
例えば、以下のようなものが該当します。
- TOPページ(本体ドメイン):http://www.hontai.com
- 予約ページ(サブドメイン):http://www.reservation.hontai.com
- ブログ(サブドメイン):http://www.blog.hontai.com
サブドメインとは、TOPページなどの本体ドメインの先頭に違う文字を追加して作成したドメインのこと。ドメイン取得サービスを使わず、本体ドメインを登録しているサーバーの管理画面で設定されたものです。
GA4のクロスドメイン測定の仕組み
クロスドメインについて、「どうやって計測しているか」「UAとの違いは何か」を詳しく見ていきましょう!仕組みがわかると、クロスドメイン計測の設定の重要性がより理解できます。
アクセス情報がわかるCookieがポイント
GA4(Googleアナリティクス 4)とは、Webサイトへ訪問したユーザーの行動(エンゲージメント)を分析するアクセス解析ツール。アクセス情報(アクセス日時・アクセス回数・行動履歴など)を一時的に記憶しておくファイル「Cookie」を利用して、ユーザーとセッションのIDを設定しています。
ユーザーのアクセス状況を追跡したデータがドメイン単位で保管されるCookieでは、別ドメインを持つWebサイトのCookieにはアクセスできません。ユーザーが別のドメインへ移動するたびに新しいCookieと新しいIDが設定されるため、Aさんが複数のドメインをまたいで行動すると、Bさんとしてデータ計測されます。
クロスドメイン計測の設定をすると、流入したドメインから移動先のドメインにCookieが渡されます。ユーザーのIDもそのまま転送されるため、同一ユーザーがアクセスしたデータとして計測され、ユーザーのエンゲージメントが正しく測定されます。
UAとの違いは設定方法
2023年7月にサポートを終了したUA(ユニバーサルアナリティクス)でも、ユーザーがほかのドメインへ移動したときにCookieを引き継ぐ設定ができました。しかし、Googleタグマネージャー(GTM)の使用またはソースコード内での実装をするため設定方法はやや複雑。すべてのドメインが対象で、参照元除外の設定もあり手間がかかっていました。
GA4では、片方のドメインの管理ページから簡単に設定するだけで同一ユーザーとして見分けられるように。ユーザー行動の単位が「セッション(移動)」から「イベント(操作)」に変わったことで、異なるドメインを行き来するユーザーの行動をより正確に捉えられるようになっています。
クロスドメイン測定の設定方法
では、いよいよクロスドメイン測定の設定へ!メリット・必要かどうか・仕組みを理解したうえで進めていくと、スムーズに完了します。
管理者または編集者の権限を取得
まずは、GA4の権限について確認します。
- 管理者:アナリティクスのすべてを管理できる(ユーザーの追加や削除など)
- 編集者:プロパティ単位の設定をすべて管理できる(ユーザーの管理は不可)
「マーケティング担当者」「アナリティスト」「閲覧者」「なし」では設定できません。上記に該当しない場合は権限を変更し、アクセス権を取得しましょう。
すべてのページにGA4計測タグを設置
続いて、GA4で計測したいすべてのページに計測タグを設置しましょう。
WebサイトのHTMLにgtag.jsを直接書き込むのも良いですが、おすすめは「Google タグマネージャー(GTM)」を使うこと。一括で設置できるため、測定ID(G~で始まる)の入力間違いが防げます。
外部サイトと連携する場合は、外部サイト内の管理ページで設定するか提供元会社に直接依頼をしましょう。
GA4の管理ページで設定完了
同一タグが設置できたら、クロスドメインの対象となるドメインを登録します。別ドメイン側の設定は不要で、片方だけでOKです。
手順は以下のとおりです。
1.管理ページの「データストリーム」を選択
2.対象のストリームを選択
3.下へスクロールし、Googleタグの「タグ設定を行う」を選択
4.設定の「ドメインの設定」を選択
5.「条件を追加」から「マッチタイプ(含む)」「ドメイン」を入力して「保存」を押下で完了
2つめ以降も、条件を追加から同じ流れで設定していきましょう。
※参照元:[GA4] クロスドメイン測定のセットアップ|アナリティクス ヘルプ(2024年3月時点)
クロスドメイン計測の設定後は動作確認を忘れずに
クロスドメインの設定が完了したら、正常に計測が行われているかどうかの確認を。方法は以下の3パターンです。
- リンク先ドメインのURLのパラメータを見る
- GA4のレポートで流入元を見る
- Tag Assistant Legacyを見る
それぞれ詳しく紹介します。
リンク先ドメインのURLのパラメータを見る
Webサイトから設定したドメインのサイトへアクセスし、URLの末尾に「?_gl=」というパラメータ(変数)が含まれているかどうかを確認しましょう。
- 移動先の予約サイト「http://www.reservation.com/?_gl=12345」
例えば、Webサイトからリンクをたどって予約サイトへアクセスしたときに、上記のようなURLになっていれば正しく動作しています。
GA4のレポートで流入元を見る
URLのパラメータだけでも動作確認ができますが、念のためにGA4のレポートを見て流入元が正しく測定されているかどうかを確認しましょう。
方法はこちら。
- レポートの「集客」を選択し「トラフィック獲得」を開く
- セカンダリディメンションを「セッションの参照元」に変更
Webサイトへ流入した参照元が一覧で表示されるため、クロスドメイン計測を設置したサイトが含まれていないかを確認します。含まれていればアウト。デフォルトでは不要な「参照元除外」の設定が必要です。
Tag Assistant Legacyを見る
※出典元:[DEPRECATED] Tag Assistant Legacy|chrome ウェブストア(2024年3月時点)
Google Chromeの拡張機能「Tag Assistant Legacy」を使用して、サイトに設置されたタグが正確に動作しているかを確認しましょう。別名「Google Tag Assintant」ともいい、日本語には非対応なので最初のうちは慣れずに戸惑うかもしれません。
ただ、Webページに移動するだけでどのタグが使われているのかが表示されるので大変便利。サイト間を移動するだけで、クロスドメインの検証結果が色で表示されます。
インストールと確認方法はこちら。
- Chrome ウェブストアから「Tag Assistant Legacy」を開く
- 「Chromeに追加」をクリックしてインストールする
- 拡張機能をオンにし「Done」をクリック
- 「Enable」をクリック
- 確認したいWebページのGA4アカウントにログイン
- Tag Assistantを立ち上げ「Record」をクリック
- そのまま元のドメインへアクセス
- 移動先のドメインへアクセス
- 検証結果が表示される
ここで、表示されたタグの背景にご注目!
- 緑色:問題なし
- 青色:問題ない程度の軽度のエラーを確認
- 黄色:データに影響を与える問題がある警告
- 赤色:重大な問題があり正常に機能していない
「緑色」であれば、正しく動作していることがわかります。Tag Assistant Legacyは、ブラウザのヘッダーに固定しておくとすぐに確認できるのでおすすめです。
クロスドメイン設定のトラブル例と対処方法
クロスドメイン測定の動作確認をして、うまくいっていないというトラブル。例えば、以下のような原因が考えられます。
- GA4タグが全ページに設置されていない
- クロスドメインの設定を間違っている
- リダイレクト処理が実行されている
- 設定後に一定時間を空けていない
それぞれの対処法をお伝えします。
GA4タグが全ページに設置されていない
計測したいドメインをもつすべてページに、GA4の計測タグが正しく設定されていないケース。クロスドメイン測定は同じ計測IDで管理されるため、測定ID(G~で始まる)の文字列を統一しましょう。
上記でご紹介した「Tag Assistant Legacy」をインストールして、まずはタグの確認をするのもおすすめです。
クロスドメインの設定を間違っている
GA4の管理ページからの設定中に、順番や入力条件を間違えているケース。例えば、「マッチタイプが異なる」「ドメインの文字列が異なる」などが考えられます。
こちらも、Tag Assistant Legacyからまずはタグの確認を。間違っている部分を発見して、設定の正しい流れに沿って修正を進めましょう。
リダイレクト処理が実行されている
Webページにリダイレクトが設定されているケース。リダイレクトとは、あるページへアクセスしたときにほかのページへ自動的に転送させる手段のことです。
- URLの正規化をおこなった
- WebページのURLを変更した
- Webページのメンテナンス中
- Webサイトを新しいドメインに移管した
- 削除したページの代替のページが存在する
このような状態でリダイレクトを設定していると、クロスドメイン測定に必要なURLのパラメータが削除され、うまく引き継がれないため正常に作動しません。
リダイレクトを解除するには、サーバー上に設置した「.htaccessファイル」の名前をつけ直したりファイル内のコードを無効化したりします。専門的な処理が必要なため、自信がない場合はWebサイトの制作会社や専門業者に相談しましょう。
設定後に一定時間を空けていない
クロスドメイン測定の設定は、反映されるまでに時間がかかります。上記の3点に間違いがなければ、数時間〜1日ほど待ってからもう一度動作の確認をしましょう。
おさらいですが、動作の確認方法は以下の3パターン。
- リンク先ドメインのURLのパラメータを見る
- レポートで流入元を見る
- Tag Assistant Legacyを見る
設定時に入力したドメインのページのURLを見たり、インストールしたTag Assistant Legacyを立ち上げてタグの色を確認したりしましょう。
正しいユーザー分析で課題の認識と改善策の立案を!
クロスドメイン測定の設定をする目的は、ユーザー行動を正しく分析するため。正確なデータに基づいて課題や改善策を考えると、あなたのWebサイトがより正確で適切に運営できます。
クロスドメイン測定の設定がうまくいかないときは、以下に該当しないかを要チェック!
- GA4タグが全ページに設置されていない
- クロスドメインの設定を間違っている
- リダイレクト処理が実行されている
- 設定後に一定時間を空けていない
それぞれの対処法を試してみましょう。
GA4の設定は、Googleのアナリティクスヘルプを見てもわかるように専門的な言葉がずらりと並んでいます。今回のクロスドメイン測定の設定も含め、疑問点や相談事があれば、サイト制作やSEO対策をサポートする「WCA」までお気軽にご相談くださいませ。